スマートフォンの登場で爆発的に増加したタッチパネル操作は、階層をもったアプリで多種多様な機能を集約することが可能となり、モバイル機器に止まらず車載や産業機器にも広く浸透しました。
しかし、それまで操作の主流であったメカスイッチでは、操作が完了したことを操作者にクリック感としてフィードバックしていましたが、タッチパネルでは画面の切替わりや音でのフィードバックとなり、操作者の状況によっては伝わりにくい場合があります。そこでスイッチメーカーであるアルプスアルパインは、タッチ操作においても感触によるフィードバック(ハプティクス)に適したハプティック® リアクターを開発しました。
ただ、モバイル機器と車載・産業機器とでは機器のサイズも使われる環境も異なってくるため、感触によるフィードバックには、より強い振動力をもったデバイスが求められます。
ハプティック® リアクター ヘビータイプは、大きなキレの良い振動で車載、産業機器のタッチ操作のフィードバックを行います。
ハプティック® リアクター ヘビータイプはタッチパネルの裏側に設置され、パネルに対して水平方向に振動します。人間の指先の感覚器官は水平方向の変位を凹凸感として錯覚する性質があると言われており(ラテラルフォースフィード現象)、触れた指にメカスイッチを押したようなクリック感が得られます。
ハプティック® リアクター ヘビータイプの振動原理を電磁力と内部構造の簡略図を使ってご説明します。
磁界の中に導体を置き電流を流すと電磁力が発生し、導体に磁界と電流にそれぞれ直交する向きに力が働きます。この力の向きを示したものがフレミングの左手の法則です(下図)。
可動子はばねで弾性支持され、コイルは動かないよう固定されています。
コイルに右図の方向に電流が流れると電磁力が発生します。ただし、コイルが固定され、磁石がばねで弾性支持されているため、反作用により可動子はフレミングの左手の法則の反対方向の右に動きます。
STEP 2と逆向きの電流を流すと可動子は左に動きます。
STEP2とSTEP3を繰り返すことにより可動子は左右に移動を繰り返し水平方向の振動が生まれます。
磁気回路構造の工夫等によりハプティック® リアクター ヘビータイプは、従来の当社ハイブリッドタフタイプに比べ5倍の15G*の振動力を生み出します。
振動力を動画でご確認ください。ハプティック® リアクター ヘビータイプ1台で、水面と発泡スチロールのボールに振動を伝えています。全面に振動が伝わっているのがお分かりいただけます。
ハプティック® リアクター ヘビータイプと競合する他のフィードバックデバイスを比較したものが以下になります。ハプティック® リアクター ヘビータイプは、共振を利用した振動強度と実装性の良さが特長になります。
ハプティック® リアクター ヘビータイプ |
ソレノイド | ERM | ピエゾ | |
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イメージ | ||||
サイズ | ★★ | ★ | ★★ | ★★★ |
駆動電圧 | ★★ | ★★ | ★★ | ★ |
振動強度 | ★★★★ | ★★ | ★★ | ★★ |
応答性 | ★★ | ★★★ | ★ | ★★★ |
消費電力 | ★★★ | ★ | ★ | ★★ |
表現力 | ★ | ★ | ★ | ★★★ |
実装性 | ★★★ | ★★ | ★★ | ★ |
特徴 |
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ERM(=Eccentric Rotating Mass 偏心モーター):錘を回転させ遠心力により振動を発生
ピエゾ(=圧電素子)電圧を印加することで変形するセラミクス材料を応用