アルプスアルパインは長年レンズの生産を行っており、特に光通信用非球面レンズにおいては高い市場シェアを誇っていますが、その他の市場に向けても非球面レンズの開発を行っています。今回は、業界最小サイズの色消しレンズ(アクロマートレンズ)についてご紹介します。
色消しレンズといっても実際に色を消してモノクロにするといったものではありません。これは"achromat"という英語("a"=否定の意+"chromat"=色彩)を訳す際に『色消し』と訳したのでそう呼ばれていますが、消すのは”色”ではなく"色収差"です。
ご存知の通り、光には青、緑、赤などのような"色"があります。それぞれの色には、それぞれ固有の波長があり屈折率が異なります(Figure 1)。プリズムを使って色を分けられるのはこのためです。例えば、波長の長い赤色はあまり屈折せず、逆に波長の短い青色は大きく屈折します。このため、通常の凸レンズに光を通すとFigure 2のようにピント位置が同じになりません。これを『色収差』といいます。
この色収差を補正するために用いられるのが、凹レンズと凸レンズを組合わせた色消しレンズです(Figure 3)。
※ 色収差にはこの軸上色収差のほかにも倍率色収差が、また単色収差には球面収差含め5つの収差があります。
色消しレンズによる色収差の解決自体は既知の技術です。アルプスアルパインでは、この色消しレンズを、長年培った高精度ガラスモールド技術とガラス接合技術により、非球面でかつΦ2mmのサイズの小型化を実現しました。
対応波長 | 440nm~660nm |
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有効径(ビーム径目安) | コリメート側 Φ1.4mm(有効NAにて) |
有効NA | 0.172(全角約19.8°、半角約9.9°) |
レンズ径 | Φ1.5mm |
焦点距離 | 4mm(@587.6nm) |
W.D. | 2.85mm(調整前提) |
外形サイズ | Φ2mm × t 1.57mm |
非球面接合により、色収差に加え球面収差も補正できます。
補正の有無を比べると、色消しレンズのない右側では赤味を帯びているのが分かります。
さらに、現在Φ1mm+□1mmの業界最小クラスの色消しレンズも開発中です。このように当社のガラス接合/調芯技術により、小型化に加えさまざまな外形の接合が可能で、お客様のご要求の形状、光源高さ、光路長、パッケージ寸法などに柔軟に対応します。
対応波長 | 440nm~660nm |
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有効径(ビーム径目安) | コリメート側 Φ0.8mm(有効NAにて) |
有効NA | 0.316(全角約36.8°、半角約18.4°) |
レンズ径 | Φ0.83mm |
焦点距離 | 1.2mm(@520nm) |
W.D. | 0.546mm(調整前提) |
外形サイズ | □1.0mm × t 0.98mm |
当社Φ2mmと□1mmの色消しレンズと、Φ0.5mmのシャープペンシルの芯で、サイズ感を実感してください。
レンズの小型化、軽量化が実現できるといろいろな用途への適用が可能となります。例えばARグラス。超小型のRGBレーザー光源に当社の色消しレンズやコリメータレンズを組み込んでARグラスで映像を見るなども可能になります。
他にも、モバイル用小型プロジェクタなど、小型、軽量化ニーズに応えるさまざまな用途が考えられます。