タクトスイッチ®の寿命には、機械的に操作回数が限界を超えた場合以外にも操作回数は少なくても年数が経つことにより初期の仕様を満足できなくなる場合があります。民生機器では、家庭用ゲーム機器に代表されるように操作回数が多いため主に機械的動作回数の耐久性のあるものが求められますが、産業機械などでは操作回数は多くなくても耐久年数の長いものが求められます。
そこで今回はタクトスイッチ®の耐久年数の長寿命化に対するアルプスアルパインの取組みをご紹介します。
タクトスイッチ®の耐久年数を左右する使用環境
長い期間使用することによりタクトスイッチ®各部に変化は起こり得ますが、使用される環境によっても電気的な性能に影響を受けます。特に影響が大きいのは接点面の変化で、接点の表面に被膜ができることにより導通不良を引き起こす場合があります。
ここで当社でベーシックなSKHHシリーズでの環境性能評価試験※の結果をご紹介します。当社採用の銀接点に影響の大きい腐食系ガスである硫化水素(H2S)ガスで評価を行いました。
試験条件：H2Sガス濃度3ppm 温度40℃ 湿度75% 768h (通常環境であれば10年以上に相当)
実際の使用に近づけるため、１日に１回操作することを繰り返しました。
SKHHシリーズの接触抵抗の初期スペックは100mΩ以下ですが、試験後は接点面が変色* し接触抵抗値が上昇** していることが分かります。
* H2Sガスにより銀メッキの表面に硫化被膜が生成されることで変色します
** 接触抵抗値の上昇に個体ごとのバラツキがあるのは、各接点の接触状態に差があるためで、いずれの接点も一様に変色していることから導通性能は劣化しているものと考えられます。
併せて国内の他の主要メーカーの同構造のものとも比較しましたが、ほぼ同等であることが確認できました。
接点へのガスの侵入の防止
上記の通り、使用される環境下のガスに接点が触れることにより接点は劣化します。
先にご紹介したSKHHシリーズは接点部を密封していない構造ですが、当社では、フィルム(インシュレーターと呼ぶ)やゴムのシート(スペーサーと呼ぶ)で接点を囲って接点を外気に触れさせないタクトスイッチ®があります。この構造により、使用環境（ガスなど）による接点部の耐久年数は格段に延びます。
右図に弊社接点密封タイプのSKQBシリーズの構造例をご紹介します。インシュレーターとスペーサーで接点(メタルコンタクト)を密閉しています。
また、前述と同様の環境性能評価試験の結果も以下に示します。
接点を囲っていない上記SKHHシリーズと比較して接触抵抗値も接点の色も変化していないのがお判り頂けます。
試験条件：H2Sガス濃度3ppm 温度40℃ 湿度75% 768h (通常環境であれば10年以上に相当)
実際の使用に近づけるため、1日に1回操作することを繰り返しました。
当然、インシュレーターやスペーサーで接点を囲うことによってガス以外にも水や塵などの異物の侵入も防ぐことができます。
インシュレーターやスペーサーで接点を囲っているタクトスイッチ®の当社バラエティは以下のシリーズとなります。
ポッティング対応のタクトスイッチ®
部品実装後に実装部品を基板ごと樹脂で覆って密閉するポッティングという方法があります。このポッティングによって接点への気密性をより高めることができます。当社では以下のポッティング用タクトスイッチ®も取り揃えています。
アルプスアルパインは上記以外にも各種スイッチを取り揃えています。
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